早期退職のリアル

なぜ、地方公務員を早期退職したのか、5つの理由

今、仕事に悩んでいる人は多い。では公務員は・・・

働き方が大きく変わりつつある昨今、「今の仕事はやめたい」「仕事があわない」と思っている方は多いのではないでしょうか。

しかし、実際に早期退職や転職される方は、その中の一握りかと思いますし、さらに公務員ともなれば、終身雇用制度の申し子ともいえる職種ですので、そもそも転職は想定されていないと感じます。

また、民間企業に比べ「公務員はノルマもなく、給料は安定しているし、辞める必要ないんじゃない」と考える方も多いのではないでしょうか。

確かに、公務員は、様々な面で安心感は抜群、不祥事でも起こさない限り、身分は保証されています。実際、私の勤めていた職場でも早期退職する人は、ごくわずかです。

それでは、なぜ私は60歳まであと5年、法律改正後の定年64歳までは9年もある55歳の時期に「安定」を捨て、辞めることに踏み切ったのでしょうか。

ここでは、私が「地方公務員を早期退職した5つの理由」をお話しします。

ここでお話しする内容が、少しでも、今、悩んでいる方の参考になればと思います。

公務員でありながら、早期退職に踏み切った5つの理由

早速ですが、大雑把にいえば、理由は以下の5つです。

  1. 仕事の「プレッシャー」から早く逃れたかった。
  2. 管理職というポジションには来たものの、仕事に対するモチベーションは上がらなかった。
  3. 「組織」ではなく「個人」で活動してみたいと思った。
  4. 「好きな働き方」を模索し、仕事とプライベートのバランスを自分で決めていきたいと考えた。
  5. 早期退職することによる経済的リスクが少なくなった。

一つずつ、少し細かくお話しします。

理由1 仕事のプレッシャーから早く逃れたかった

なんだかんだ理屈をこねたとしても、やはり一番の理由はこれです。

公務員でない皆さんから見れば、公務員というと「民間企業より仕事は楽なんじゃない?」というイメージもあるかと思いますが、実際の公務の現状は、構造的・複合的な課題が山積していて、なかなかの厳しさです。

おまけに自治体の財政逼迫や、コンプライアンス順守なども加わり、業務はひっ迫し続け、多くの矛盾が職場に生じています。

「通常業務に加え、解決しない仕事も増える一方、でも人員は削減され続ける」という状況は、もはや当たり前です。

また、各人の業務量や成果も、その資質・能力等により大きく異なっているにもかかわらず、給与があまり変わらないなどの「不公平感」(これは給与が安定していることの裏返しなのですが・・・)があります。

まあ、誰しも「できる人」に仕事はお願いしたくなるものです・・・

また、管理職になってからは、これら現状の厳しさと、職場環境の矛盾に向き合わなければならないことも多くなります。さらに外部への公的な対応、県民・議会筋からの様々な要望の対応、組織内での幹部との協議も含め、多くの場面で「矢面」に立たなければなりません。

今までを振り返れば、30年以上の公務員生活は

  • 比較的伸び伸びと働いていた30歳代前半まで
  • 働き盛りで部下も多くなり、仕事の壁にぶつかりながらも、悩みながらハードワークしていた30歳代後半~40歳代。
  • 管理職として、現状や組織の矛盾に向き合う50歳代。

といった流れでしたが、やはり管理職になってからは「懸案」や「まだ起こっていない不安」を過剰に心配したりして、休みの日も切り替えられず考え事をすることや、夜眠れないということが増えていました。

このような悩みへの対応は、経験を重ねることで、徐々にうまく対応する術も身についていくのですが、それでも仕事の進め方が「果たしてこれでいいのか」という想いや、矢面に立つ「プレッシャー」から逃れたいという気持ちは、日に日に大きくなりました。

理由2 管理職というポジションには来たものの、仕事に対するモチベーションは上がらなかった。

少し現実逃避のような、ある意味「正直」な気持ちを先にお話ししましたが「管理職」というポジションには別の想いもありました。

実は私のいた職場では、管理職になるための「昇任試験」があります。つまり、試験さえ受けなければプレッシャーのかかる「管理職」になることはありません。

私も試験対象者となった初年度は、当時の課長の勧めを固辞し、管理職の試験を回避しました。ただ、次の年も強い説得を受け、試験を受けることに・・・

そこにはこんな想いがありました。

  • 自分の身近な同期入庁者もみんな受けているし、やはり受けた方がいいのではないか。
  • 管理職にならずに、年下の管理職の部下として忠実に働けるか。やはり「年相応」に昇任した方がいいのではないか。
  • 管理職になれば、これまでとは違った景色が見えるのではないか。一回経験するのも悪くはないか。
  • 給与など処遇面は多少よくなるのではないか。

そんなこんなで結局は意思の弱さを露呈し、「周りに流されて」試験を受け、管理職に収まりました。

しかし、管理職になってみると、現実はやはり懸念していた材料の方が多くメンタル的にも厳しいものがありました。

数年経って、経験も積み、どうしても辞めなければならないほど、追い込まれている訳ではありませんし、さらにもう1,2年このポジションを続けていれば、多少の昇任や昇給も想定はできます。

それでも、今そこにある仕事が「自分の目指していたもの」とも思えず、結局、経済的恩恵以外のものを見出せませんでした。

自分にとって、この仕事はライフワークではなく、「ライスワーク」だったのでしょう。

理由3 「組織」ではなく「個人」で働いてみたいと思った。

公務というのは、民間以上に様々な制約を受けながら業務をこなす訳で、組織的な対応が重視されるのは言うまでもありません。

それでも、(組織にとって)都合の悪いことや、言ってもどうしようもないことであっても、おかしいと思うことは、つい口に出してハッキリ言ってしまうタイプだった私は、周りから頻繁に「○○さんは、よく心折れずにハッキリ反論できるねぇ・・・」と、誉められているのか、貶されているのか、よくわからない言葉を掛けられました。

そんな私だったので、特に意思決定に延々と時間のかかる、長い長い縦のラインで仕事をするのは、少し苦手意識がありました。

そのかわりに5~6人のグループで明確な目標に向かう仕事だったり、誰かと組んでやるプロジェクト型の仕事などは、コミュニケーションがとりやすく、仕事内容にかかわらず、成果を上げていたような気がしています。

「今までの社会的地位はいらないので、もっと個人で仕事をしてみたい」

 特に管理職になってからは、そんな想いが強くなっていたのかも知れません。

理由4 「好きな働き方」を模索し、仕事とプライベートのバランスを自分で決めて行きたい。

県庁で働いていれば、週休2日で、福利厚生も充実しています。もちろん、休日出勤に時間外勤務も少なくはありませんが、やはり公務員はその点では恵まれているといえるでしょう。

それでも、勤務日には必ず通勤しなければなりませんし、仕事の進捗や多くの外的な要因で状況が左右され、それに拘束されなければなりませんし、詳しくは話しませんが、意外に「ブラックな」側面もあります。

当然ですが、「やりたくない」仕事や「矛盾だらけ」の仕事も、選択の余地はありません。

「それは会社に勤めていれば、普通のことだよ。」といわれそうですが、今、自分が仕事に求めていることは、「やりがい」「自由度のある働き方」と「生活できるだけの収入」です。

当然、「自由度のある働き方」を実践しつつ、「生活できるだけの収入」を得るには、それなりの価値のあるものを、すべて自己責任で提供しなければなりません。

公務員生活に慣れ切った私には、とても困難なタスクであることも承知していますが、「経済的リスクも大きくないし、人生で一回ぐらい、挑戦してみてもいいのでは」

最終的にはそんな想いを抑えきれなくなりました。

理由5 早期退職することによる経済的リスクが少なくなった。

上記1から4までの理由については、同じ感情を抱く方も多いのではないかと思います。

しかし、実際には、これからお話しする経済的な問題で、早期退職に踏み切れない方が多いのではないでしょうか。

公務員を辞める以上は、最大の長所である「安定した収入」を捨てなければなりません。多くの方が辞めるハードルになるのはここですし、仕事の最大目的を「収入を得ること」と考える方には公務員の「安定した収入」を捨てる選択肢はなかなか取れません。

ただ、年齢が50代後半に差しかかった管理人は、「これは何とかやっていける」と考えるようになりました。それには以下の環境変化やこれまでの積み重ねがありました。 

  • 2人のこどもが大学を卒業し、就職。
  • 住宅ローンをはじめとした「負債」はなく、退職金を今後の生活資金に充てることができる。
  • 家計そのものがあまり「浪費体質」ではない。

少し細かいプライベートの話ですが、今、早期退職を考えている方、あるいは、今後計画したい方にむけて、一つずつお話しします。

2人の子どもが大学を卒業し、就職。

昨年3月に長女が大学を卒業し、2年前に就職した長男とともに社会人となりました。

経済的には、まさに「大きなハードル」を乗り越えた感じです。

ちなみに2歳違いのため、2人が大学在籍中の6年間にかかった経費は概ね以下のとおり

  • 県外公立大学の長男が4年間の学費・仕送りで約850万円。
  • 地元私立大学に通った長女の4年間の学費が約500万円。

大学にかかる経費も様々な試算が出ていますが、私の家庭の場合は、ほぼ典型例に近い支出額でした。

この結果、人生三大経費の一つ、「教育費」の中でも、特に負担の大きい大学の費用、私の場合、約1,350万円以上の「支出」が終了しました。

学資保険など次善の策も取っていましたが、やはりこの6年間のボーナスをはじめ、収入と貯金の大半を使い果たしてしまいました。

ただ、子どもたちもアルバイト等で協力してくれたため、私自身も「負債」を背負わずに「心臓破りの坂」を上り終えました。

住宅ローンをはじめとした「負債」はなく、退職金を今後の生活資金に充てることができる。

「支出」は大きなハードルをクリアした訳ですが、現状の家計も比較的良好です。

まず「住宅ローン」などの負債がないこと。

これはマイホームの選択が大きく寄与していると思いますが、40歳の時に購入したマイホームは、1,850万円の中古物件であったため、現在かかえている住宅ローンはありません。

また、両親も既に他界しており介護費用の心配もなく、子ども二人も就職したため、あとは自分たち夫婦の老後資金をメインに考えればいい状態になっています。

現在の貯金はそれほど多くありませんが、今回の退職金を合わせると、年金支給開始を65歳と想定した約10年間の生活費のリスクヘッジには十分な金額(多いのか少ないのかは個人の考え方によると思いますが・・・)であると考えました。

もちろん、その10年間で、老後に備え、しっかり「稼ぐ」ことを忘れてはいけません。

家計そのものがあまり「浪費体質」ではない。

私自身が2級フィナンシャルプランナー技能士で、多少なりともお金の知識がある中で、妻もどちらかというと「無駄なお金を使わない」タイプです。

「ミニマリスト」というほどの節約・倹約ではありませんが、子どもの大学卒業後、長女も含め3人で暮らしている我が家の支出は概ね月20~25万円程度で推移しており、年間300万円以下で快適に生活できています。

もちろん、このままでは退職金を加えた貯金も底を尽きますし、その他のイベントリスクも考える必要がありますが、決して完全リタイアするつもりもないので、早期退職を前向きに考えられる大きな要素になっています。

最後に・・・ダメならやり直せばいい。

ここまで地方公務員を辞めた5つの理由を述べましたが、前に一歩踏む出すことができた、一番の大きな理由は、実は5番目の経済的理由だったのかも知れません。(確かにお金の問題はとても重要です)

それでも、他にも多くの障壁がありましたが、最後は「失敗しても、最終的にはやり直せばいい」と開き直れました。

「個人で働いていきたい」と強く思ってはいますが、実際そんなに甘くないと考えています。

挑戦する前から「失敗していい」とは言えませんが、もし2、3年挑戦してみて、ダメなら、また「給料」を貰う仕事を探してもいいのかなと。

もちろん、処遇は大きくダウンし、希望している収入にはならないと思いますが、人手不足の今、シルバーにさしかかる私でも何らかの「仕事」はあると思います。

そもそも現役公務員時代の待遇などは全く求めていないので、あとは自分の生活とどう折り合いをつけるかだけです。

そう考えることができたのも、家族の理解があったのと、前述の理由が複合的に重なってのものです。

公務員の仕事に対して、ネガティブな要素も多く記載してしまいましたが、今は前向きに、自分や家族の「クオリティ・オブ・ライフ」「ウェルビーイング」を追求していきたいと思っています。

今回のとりとめもない話が少しでも、皆さんのお役に立てれば幸いです。

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  • この記事を書いた人

松尾知真

九州在住50代、元地方公務員(中間管理職)。 子どもの就職を機に、これまでの生き方 を変えるべく、33年間務めた公務員を早 期退職し、WEBライター等フリーラン スとして活動開始。 【主な資格・業務経験等】 フィナンシャルプランナー2級技能士、 クラウドワークスWEBライター検定3級、 公共不動産取得業務経験10年超、 【趣味・スポーツ経験】 株式投資、債券投資、 Jリーグ観戦マニア(ブログ展開中)、 サッカー4級審判経験あり、 バドミントン30年超継続中、 ソフトテニス経験有

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